ラベル 15歳からの数学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 15歳からの数学 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年6月7日木曜日

連載【15歳からの数学(桜井進)】第2回 関数入門~関数の基本~


第2回 関数入門~関数の基本~



    リーマン予想


リーマン予想はゼータ関数についての性質を述べた命題(※1)です。リーマン予想を語る難しさの第一は冒頭のゼータ関数 ζ(s)の難しさに他なりません。そのゼータ関数 ζ(s)は次のように表されます。


このゼータ関数は、オイラーの手によって発見されその性質が徹底的に研究されました。その成果を引き継ぎさらにゼータ関数の隠れた性質を発見したのがリーマンです。よってゼータ関数は「リーマンのゼータ関数」と呼ばれます。

ゼータ関数の難しさはそれが複素関数であることです。複素関数とは複素数を変数とする関数のことです。複素関数を語るにはまずは中高の数学で学んだ “ふつうの”関数から学び直す必要があります。もちろん複素数についてもです。

そもそも、高校の数学でも“関数”それ自体を取り上げる機会はあまりありません。

「そもそも関数とは何か?」

と問われた高校生の多くは面食らいます。「そんなことは習っていないし、受験にもでない」と一蹴されるのがオチです。

現在、関数は二つの集合同士の写像として定義されます。集合は、数学にとって基本的ツールです。その有効性はあらゆる分野で確認することができます。ところが、思いだしてみても最近の中学数学と高校数学では、集合もつっこんだ学習をしません。高校数学で「集合と論理」のほんの触り程度のことを学ぶだけになっています。

関数が集合で定義されるからといって、集合から関数を学び直すことは一般にはあまりいいプログラムだとは思われません。これまでに習った具体的関数を「関数」として学び直してみることにします。その過程で少しずつ集合としての定義にもふれていきましょう。

当面のテーマとして三角関数指数関数対数関数を取り上げます。リーマン予想には三角関数 sin, cos, tan も対数関数 log の文字は見当たりません。しかし、オイラーがゼータ関数を発見していく過程に欠かせなかった関数こそ三角関数、指数関数、対数関数でした。これぞ、高校数学でならう関数の代表例です。

※1) 命題とは、正しい(真)か正しくない(偽)が定まる数学の式や文のことをいいます。例えば、 “1+1=2”は真である命題、“1=2”が偽である命題、“人間は利口である ”は真偽が定まらないので命題ではありません。 “利口”が曖昧な言葉だからです。命題は真と主張するために「証明」を必要とし、偽と主張するには「反例」をあげれば十分です。リーマン予想には曖昧さが ない――すべて定義された言葉の集まり――ので命題です。真であることの証明が模索されている命題は “予想 ”(もともと“仮説”)と呼ばれます。


単項式と多項式
まずは、中学数学の復習からです。 1次関数と 2次関数で関数の基本を確認していくことからはじめましょう。

1次関数 y =3x+1、2次関数 y = x2 とはその右辺の式がそれぞれ 1次式、 2次式であるものをいいます。そこで式の基本から説明していきましょう。

3xx2、4のような式を単項式といいます。 xを何乗した形(累乗またはべき乗といいます)の前にかけられる数を係数といいます。

xn x n 次式といいます。 x を含まない単なる数は定数と呼ばれます。 3x は1次式で係数は 3、x2 は2次式で係数は1です。定数 ax0=1 より a = ax0 と表されるので次数は 0です。

4x+3x2+5 のようにいくつかの単項式の和で表される式を多項式といいます。多項式は式の整理の仕方が大切です。 3x2+4x+5 のように左から 2次、 1次、定数の順に単項式を並べる整理の仕方を降べきの順といいます。それとは逆に、 5+4x+3x2 のように左から定数、 1次、2次の順に単項式を並べる整理の仕方を昇べきの順といいます。



1次関数と 2次関数
y =3x +1という関係式が与えられたとすると、 xにさまざまな値を代入するとそれに対して y もさまざまな値をとることになります。この様子は次のような表に表すことができます。

 
関数 y = f(x) を満たす xy の組 (x, y) を座標にもつ点の集合を関数のグラフといいます。関数 y = f(x) のグラフは 1つの曲線(直線)をえがきます。
1次関数のグラフは直線をえがきます。


2次関数 y = x2のグラフは放物線をえがきます。




関数の定義域と値域
中学・高校数学ではじめて習う関数の大前提は数の範囲が実数であるということです。 1次関数 y =3x+1、2次関数 y = x2 どちらも x のとりうる範囲はすべての実数をとることがグラフからもわかります。それに対して y のとりうる範囲は、 1次関数 y =3x +1 はすべての実数であるのに対して、2次関数 y = x2 は 0 以上の実数です。

このように、関数を考える場合に変数 xy がとりうる範囲が問題になります。 x の範囲を関数の定義域y の範囲を関数の値域といいます。このような実数を定義域、値域にもつ関数を実関数といいます。

それに対して、わたしたちのターゲットであるゼータ関数の定義域、値域は複素数です。そのような関数を複素関数といいます。


 複素関数まではそれなりの道のりがあります。その基本になるのが高校数学に習う指数関数、対数関数、三角関数ですが、そのためにももうしばらく整関数である y = xn をみていきましょう。今回の 2次関数のグラフをかくのは容易ですが、 3次関数以上になるとすぐにはグラフの形はわかりません。そこに必要になるのは道具が微分法です。次回は 3次関数のグラフをかくために微分法をみていきます。(第2回了)

2012年4月6日金曜日

連載【15歳からの数学(桜井進)】第1回 算数が数学にかわるとき


第1回 算数が数学にかわるとき


わが国の小学校の算数の問題をみてみましょう。

小学校 2 年生
問題 1.図の線をつかって、のこりの 2 辺が 8cm である二等辺三角形をかきなさい。








小学校 4 年生
問題 2.次の図の角度を求めなさい。


小学校 5 年生
問題 3.次の三角形の面積を求めなさい。




これに対して、高等学校の数学の問題をみてみましょう。

問題 4.三角形の 3 辺の長さ a,b,c の間に成り立つ関係を求めよ。



問題 5.次の三角形の面積を求めよ。




問題 6.三角関数 f (x) = sin x を微分せよ。


さて、小学校の算数の問題を解くことは読者のみなさんに任せるとして、高校の数学の問題を解 きながら算数と数学の風景のちがいを読みとっていきます。


「問題 4」の解答
いわゆる三角形成立条件とよばれるものです。文章だけで述べるならば、三角形の 3 辺の間には次が成り立ちます。

どの辺の長さも他の 2 辺の長さの和よりも小さい

すなわち、

これは次の条件にも言い換えることができます。

ある辺の長さは他の 2 辺の長さの差よりも大きく、和よりも小さい 

すなわち、

「問題 5」の解答  
三角形の面積を 2 辺の長さとその間の角で表すと、


となり、3 辺の長さで表すと、


となります。これはヘロンの公式とよばれる公式です。

 「問題 6」の解答


以上が解答だけです。

実は解答を示すまでなく問題を比べるだけで算数と数学の違いは見えてきていました。算数は長さや角に単位がついています。“cm”や“ ° ”です。長さは物差しで、角は分度器で「測る」ことを学びます。そして、三角形の面積についても同じく“平方cm”や“平方m”のような単位がつきます。

これらは、すなわち目の前にある図形に対して、その図形を測ること、「計量する」ことを学ぶということなのです。三角形、四角形、円といった基本的図形に対する基本的測量と計量、長さや面積、体積の単位の換算について小学校2年生から6年生まで5年をかけて学んでいきます。結果、図形やその計量という新しい概念を、目と手と頭を使いリアリティをもって獲得することができたのです。

そして、中学の数学を経て高校の数学になると、図形と計量の風景は大きく変わります。まず、cm や °といった単位が消えます。同時に目の前にかかれた図形を実際に道具を使って測量することはなくなります。辺の長さは単に a,b,c です。面積にしても長さの単位がcmであれば平方cm、mであれば平方mといった算数のときの注意は必要なくなり、単に S だけで表されます。計量の中でも角の測り方は大転換を迫られます。辺の長さから定規をなくしたように角度から分度器をなくしてしまいます。それが弧度法による角の測り方です。

 「問題 5」の三角形の角 A,B,C ではまだ“ ° ”でも大丈夫なのですが、「問題 6」の sin x の微分になると“ ° ”では不都合になり弧度法がどうしても必要になります。小学校で5年の時間をかけて新しい概念を獲得したのに比べると、高校での時間はあまりにも少ないのです。長さから単位 cm を取りのぞき、角度から ° をとりのぞき、すべてが x に変身したときに現れる風景が数学です。

私たち人類は「測る」と「計る」に対して数千年という長い時間をかけて算数から数学をつくってきました。それを思うとき、やはり高校の数学は新しい概念の獲得のためにはあまりにも時間が少ないと言わざるをえません。高校の数学の教科書に書かれていないことが、私たち人類が数学をつくってきた過程です。単に、算数から数学への移行は、具体から抽象といっただけではすまされないことです。抽象化された数学の結論はあまりにも清楚な姿をしています。それを教科書は教えてくれます。しかし、高校の数学は数学の入り口なので もっと先の数学の風景にこそ真なる清楚な様子が見えてきます。高校の数学を反面教師として、いまこそ算数から数学への大変身の様子をリアリティをもって獲得するチャンスなのです。(第1回了)

2012年2月24日金曜日

連載【15歳からの数学(桜井進)】第0回 出立の時

 

第0回 出立の時


 1994年ワイルズによって解かれた「フェルマーの最終定理」は中学生にも理解できます。もちろん、証明ではなく問題が、という意味です。



 n が1の場合、x + y = z を満たす自然数 x, y, z は無数に見つかります。2以上の z に対して、2つの自然数 x y に分ければいいのです。
 n が 2 の場合、x2 + y2 = z2 を満たす自然数 x, y, z はすぐには見つかりませんが、32 + 42 = 52や 52 + 122 = 132 のような例なら闇雲に数を代入すれば見つけることができます。この n が 2 の場合はピタゴラスによる三平方の定理を満たす自然数の解に他なりません。

 そして、n が 3 以上になると、突如 xn + yn = zn を満たす自然数 x, y, z が見つけられなくなります。フェルマーは今から 350 年ほど前に、そのことに気づき証明にとりかかりました。本当に「すべての n」についてそうなのか。

  フェルマーは、愛読していたギリシャ時代の数学者ディオファントスが著した『数論』につぎのように書き残しました。

  真に驚くべき証明をみつけたが、ここに書き残す余白はない。

 こうして、この走り書きされた『数論』がフェルマーの死後発見されて世にひろまることとなりました。以来 350 年もの間、世界中の数学者、数学愛好者、それ以外の青年たちを熱狂させることとなり、1994 年にアンドリュー・ワイルスにより、(志村予想が岩澤理論を使って証明されると同時に)フェルマーの最終定理が証明されました。
 ピタゴラスのおかげでフェルマーの最終定理の「問題の最初の理解」は助けられたといえるでしょう。フェルマーの最終定理は素人を巻き込むほど多くの人々を魅了したのです。

 続いて、2003 年ペレルマンによって解決された「ポアンカレ予想」も、フェルマーの最終定理よりは難しいものの「問題」の輪郭はぼんやりとでも理解されたといえるでしょう※1



 2次元(平面)という幾何学の源流から始まることもあり、n次元の形まで問題が拡張されはしましたが、結局3次元多様体の場合が最難関であったことが問題の理解を助けました。この宇宙こそが3次元多様体のいい例であるからです。ひとたび、「ポアンカレ予想とは結局この宇宙の形が穴のない球体のような形をしていること」だとわかれば、多くの人が「問題の最初の理解」にたどり着けるのです。
 このように数学の歴史の中で難解とされ百年を越える長い時間と幾多の数学者の努力がつぎ込まれた問題であっても、「問題の最初の理解」は意外に難しくはないのです。おかげで数学の道を志そうとする青年が次から次へとあらわれてきます。

 ではリーマン予想はどうなのでしょうか。問題を取り巻く状況は明かです。百年以上解かれていない難問であることは「フェルマー」と「ポアンカレ」と同じですが、「問題の最初の理解」の状況が一変します。ほぼ絶望的と言っても過言ではない難しさがそこにはあります。
 「フェルマー」「ポアンカレ」では「問題の最初の理解」にとってそれぞれピタゴラス、宇宙といったとっつきやすい助っ人がいました。リーマン予想にはそのような助っ人はいません。孤高の問題「リーマン予想」に立ち向かうには何を頼りにすればいいのでしょうか。本連載の主題と目標はそこにあります。
 リーマン予想の「問題の最初の理解」が目標であり、そこへたどりつく道標を立てていくことが主題となります。すべては1859年、リーマンによって、たった8ページの論文の中で静かに述べられました。



 問題の重要性は数学の根幹に関わる点にあります。発表されて152年経つにも関わらず、「問題の何が問題になっているかという真の問題の理解」はまったく進んでいないという恐るべき現実があります。
 そんな問題がこの世にあることこそエキサイティングだと筆者はつくづく思います。「フェルマー」と違って、リーマン予想には誰にでもわかる道標がないというならばそれに挑戦しようではありませんか。
 15歳といえば中学と高校の狭間です。読者自身、15歳の自分にもどったつもりでこれからはじまる数学の旅を楽しんでください。数が奏でる遙かなる調べと美しい風景に出会うことを喜びとしていざ出発。目指すは、はるかなるリーマン予想。(第0回了)


※1 我が国では NHK 制作のテレビ番組『100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪の謎~』や、専門家による一般向け解説書が出された。それらのおかげで証明された後ではあったが、大きな関心を集めることになった。数学者の挑戦の様子を通して、問題がデフォルメされてでも伝えられ、証明のアウトラインや難解さが啓蒙された意義は大きい。


2012年2月21日火曜日

連載・15歳からの数学(予告)


今週末(2月24日)から、桜井進先生の数学連載「15歳からの数学――超入門リーマン予想」が始まります。

悪魔に魂を売ってでも解きたいといわれる魅惑的、かつ最大の難問「リーマン予想」。
私たち一般人には、そもそも問題の意味がわからない。それゆえ、難問らしいことはわかっても、どう難しいのか、なにが魅惑的なのかもわかりません。

まさに前人未踏の頂「リーマン予想」。ただ、もし、その問題が、私たちが中学校以来学んできた同じ「数学」の延長線上にあるのならば、麓あたりまでいけば、その頂ぐらいはおがめるのではないだろうか、と。そんな素朴な問いに桜井先生が応えてくれることになりました、すでに半分ぐらい忘れかけている中学数学の知識を掘り起こしながら、まずは、「リーマン予想」の山頂を目指して、第一歩を踏み出しましょう。

おおよそ隔週のペースでの更新を予定しておりますが、諸事情により、遅れが生じる可能性もありますことをあらかじめお断りしておきます。