2012年6月19日火曜日

『大悪魔との算数決戦』(小島寛之・著/大高郁子・絵)まもなく発売!

台風4号、5号の動きが気になりますが、ひさしぶりに新刊のお知らせです。

小島寛之先生の「すうがくと友だちになる物語」第一弾『大悪魔との算数決戦』がまもなく発売になります(6月22日発売)。小学生向け(10歳ぐらいから)数学冒険ファンタジー。


大高郁子さんの絵も味わい深く、大人の方にも楽しめる内容となってます。ぜひお子さんと一緒に読んでいただけると幸いです。


第二弾もただいま準備中です。夏休みの読書にもぜひどうぞ。

2012年6月7日木曜日

連載【15歳からの数学(桜井進)】第2回 関数入門~関数の基本~


第2回 関数入門~関数の基本~



    リーマン予想


リーマン予想はゼータ関数についての性質を述べた命題(※1)です。リーマン予想を語る難しさの第一は冒頭のゼータ関数 ζ(s)の難しさに他なりません。そのゼータ関数 ζ(s)は次のように表されます。


このゼータ関数は、オイラーの手によって発見されその性質が徹底的に研究されました。その成果を引き継ぎさらにゼータ関数の隠れた性質を発見したのがリーマンです。よってゼータ関数は「リーマンのゼータ関数」と呼ばれます。

ゼータ関数の難しさはそれが複素関数であることです。複素関数とは複素数を変数とする関数のことです。複素関数を語るにはまずは中高の数学で学んだ “ふつうの”関数から学び直す必要があります。もちろん複素数についてもです。

そもそも、高校の数学でも“関数”それ自体を取り上げる機会はあまりありません。

「そもそも関数とは何か?」

と問われた高校生の多くは面食らいます。「そんなことは習っていないし、受験にもでない」と一蹴されるのがオチです。

現在、関数は二つの集合同士の写像として定義されます。集合は、数学にとって基本的ツールです。その有効性はあらゆる分野で確認することができます。ところが、思いだしてみても最近の中学数学と高校数学では、集合もつっこんだ学習をしません。高校数学で「集合と論理」のほんの触り程度のことを学ぶだけになっています。

関数が集合で定義されるからといって、集合から関数を学び直すことは一般にはあまりいいプログラムだとは思われません。これまでに習った具体的関数を「関数」として学び直してみることにします。その過程で少しずつ集合としての定義にもふれていきましょう。

当面のテーマとして三角関数指数関数対数関数を取り上げます。リーマン予想には三角関数 sin, cos, tan も対数関数 log の文字は見当たりません。しかし、オイラーがゼータ関数を発見していく過程に欠かせなかった関数こそ三角関数、指数関数、対数関数でした。これぞ、高校数学でならう関数の代表例です。

※1) 命題とは、正しい(真)か正しくない(偽)が定まる数学の式や文のことをいいます。例えば、 “1+1=2”は真である命題、“1=2”が偽である命題、“人間は利口である ”は真偽が定まらないので命題ではありません。 “利口”が曖昧な言葉だからです。命題は真と主張するために「証明」を必要とし、偽と主張するには「反例」をあげれば十分です。リーマン予想には曖昧さが ない――すべて定義された言葉の集まり――ので命題です。真であることの証明が模索されている命題は “予想 ”(もともと“仮説”)と呼ばれます。


単項式と多項式
まずは、中学数学の復習からです。 1次関数と 2次関数で関数の基本を確認していくことからはじめましょう。

1次関数 y =3x+1、2次関数 y = x2 とはその右辺の式がそれぞれ 1次式、 2次式であるものをいいます。そこで式の基本から説明していきましょう。

3xx2、4のような式を単項式といいます。 xを何乗した形(累乗またはべき乗といいます)の前にかけられる数を係数といいます。

xn x n 次式といいます。 x を含まない単なる数は定数と呼ばれます。 3x は1次式で係数は 3、x2 は2次式で係数は1です。定数 ax0=1 より a = ax0 と表されるので次数は 0です。

4x+3x2+5 のようにいくつかの単項式の和で表される式を多項式といいます。多項式は式の整理の仕方が大切です。 3x2+4x+5 のように左から 2次、 1次、定数の順に単項式を並べる整理の仕方を降べきの順といいます。それとは逆に、 5+4x+3x2 のように左から定数、 1次、2次の順に単項式を並べる整理の仕方を昇べきの順といいます。



1次関数と 2次関数
y =3x +1という関係式が与えられたとすると、 xにさまざまな値を代入するとそれに対して y もさまざまな値をとることになります。この様子は次のような表に表すことができます。

 
関数 y = f(x) を満たす xy の組 (x, y) を座標にもつ点の集合を関数のグラフといいます。関数 y = f(x) のグラフは 1つの曲線(直線)をえがきます。
1次関数のグラフは直線をえがきます。


2次関数 y = x2のグラフは放物線をえがきます。




関数の定義域と値域
中学・高校数学ではじめて習う関数の大前提は数の範囲が実数であるということです。 1次関数 y =3x+1、2次関数 y = x2 どちらも x のとりうる範囲はすべての実数をとることがグラフからもわかります。それに対して y のとりうる範囲は、 1次関数 y =3x +1 はすべての実数であるのに対して、2次関数 y = x2 は 0 以上の実数です。

このように、関数を考える場合に変数 xy がとりうる範囲が問題になります。 x の範囲を関数の定義域y の範囲を関数の値域といいます。このような実数を定義域、値域にもつ関数を実関数といいます。

それに対して、わたしたちのターゲットであるゼータ関数の定義域、値域は複素数です。そのような関数を複素関数といいます。


 複素関数まではそれなりの道のりがあります。その基本になるのが高校数学に習う指数関数、対数関数、三角関数ですが、そのためにももうしばらく整関数である y = xn をみていきましょう。今回の 2次関数のグラフをかくのは容易ですが、 3次関数以上になるとすぐにはグラフの形はわかりません。そこに必要になるのは道具が微分法です。次回は 3次関数のグラフをかくために微分法をみていきます。(第2回了)