2012年2月29日水曜日

『超訳 種の起源』まもなく発売

tanQブックスシリーズ『超訳 種の起源 ―生物はどのように進化してきたのか』(チャールズ・ダーウィン著/夏目大・訳)がまもなく発売になります。


言わずと知れたダーウィンの『種の起源』ですが、進化論に興味のある方でも、意外に読んでいなかったり、途中で挫折してしまったなんて方も多いのではないでしょうか?
今回の翻訳では、そんな方でも最後まで読み通せるよう配慮した内容になっております。 部分的にセレクトするという案もありましたが、一通り読んだという、読了感を大切にしたいということで、原書と同じ章構成(短縮版)になっております。また、原書ではほとんどイラストなどはありませんが、こちらも適宜追加しました。ちなみにとても素敵なイラストを描いてくれたのは、菊谷詩子さんです。
また、『種の起源』が書かれたころの時代背景や、その後の進化論の展開などの解説もあり、中高生からでもチャレンジできるような、親しみやすさにも配慮しました。ダーウィンが『種の起源』で何を語ろうとしたのか、とりあえずそこのところを知りたいという方や、いずれは全編を読み通したい、原書で読んでみたい、という方の手引書としても、ぜひ手にとっていただければ幸いです。

2012年2月24日金曜日

連載【15歳からの数学(桜井進)】第0回 出立の時

 

第0回 出立の時


 1994年ワイルズによって解かれた「フェルマーの最終定理」は中学生にも理解できます。もちろん、証明ではなく問題が、という意味です。



 n が1の場合、x + y = z を満たす自然数 x, y, z は無数に見つかります。2以上の z に対して、2つの自然数 x y に分ければいいのです。
 n が 2 の場合、x2 + y2 = z2 を満たす自然数 x, y, z はすぐには見つかりませんが、32 + 42 = 52や 52 + 122 = 132 のような例なら闇雲に数を代入すれば見つけることができます。この n が 2 の場合はピタゴラスによる三平方の定理を満たす自然数の解に他なりません。

 そして、n が 3 以上になると、突如 xn + yn = zn を満たす自然数 x, y, z が見つけられなくなります。フェルマーは今から 350 年ほど前に、そのことに気づき証明にとりかかりました。本当に「すべての n」についてそうなのか。

  フェルマーは、愛読していたギリシャ時代の数学者ディオファントスが著した『数論』につぎのように書き残しました。

  真に驚くべき証明をみつけたが、ここに書き残す余白はない。

 こうして、この走り書きされた『数論』がフェルマーの死後発見されて世にひろまることとなりました。以来 350 年もの間、世界中の数学者、数学愛好者、それ以外の青年たちを熱狂させることとなり、1994 年にアンドリュー・ワイルスにより、(志村予想が岩澤理論を使って証明されると同時に)フェルマーの最終定理が証明されました。
 ピタゴラスのおかげでフェルマーの最終定理の「問題の最初の理解」は助けられたといえるでしょう。フェルマーの最終定理は素人を巻き込むほど多くの人々を魅了したのです。

 続いて、2003 年ペレルマンによって解決された「ポアンカレ予想」も、フェルマーの最終定理よりは難しいものの「問題」の輪郭はぼんやりとでも理解されたといえるでしょう※1



 2次元(平面)という幾何学の源流から始まることもあり、n次元の形まで問題が拡張されはしましたが、結局3次元多様体の場合が最難関であったことが問題の理解を助けました。この宇宙こそが3次元多様体のいい例であるからです。ひとたび、「ポアンカレ予想とは結局この宇宙の形が穴のない球体のような形をしていること」だとわかれば、多くの人が「問題の最初の理解」にたどり着けるのです。
 このように数学の歴史の中で難解とされ百年を越える長い時間と幾多の数学者の努力がつぎ込まれた問題であっても、「問題の最初の理解」は意外に難しくはないのです。おかげで数学の道を志そうとする青年が次から次へとあらわれてきます。

 ではリーマン予想はどうなのでしょうか。問題を取り巻く状況は明かです。百年以上解かれていない難問であることは「フェルマー」と「ポアンカレ」と同じですが、「問題の最初の理解」の状況が一変します。ほぼ絶望的と言っても過言ではない難しさがそこにはあります。
 「フェルマー」「ポアンカレ」では「問題の最初の理解」にとってそれぞれピタゴラス、宇宙といったとっつきやすい助っ人がいました。リーマン予想にはそのような助っ人はいません。孤高の問題「リーマン予想」に立ち向かうには何を頼りにすればいいのでしょうか。本連載の主題と目標はそこにあります。
 リーマン予想の「問題の最初の理解」が目標であり、そこへたどりつく道標を立てていくことが主題となります。すべては1859年、リーマンによって、たった8ページの論文の中で静かに述べられました。



 問題の重要性は数学の根幹に関わる点にあります。発表されて152年経つにも関わらず、「問題の何が問題になっているかという真の問題の理解」はまったく進んでいないという恐るべき現実があります。
 そんな問題がこの世にあることこそエキサイティングだと筆者はつくづく思います。「フェルマー」と違って、リーマン予想には誰にでもわかる道標がないというならばそれに挑戦しようではありませんか。
 15歳といえば中学と高校の狭間です。読者自身、15歳の自分にもどったつもりでこれからはじまる数学の旅を楽しんでください。数が奏でる遙かなる調べと美しい風景に出会うことを喜びとしていざ出発。目指すは、はるかなるリーマン予想。(第0回了)


※1 我が国では NHK 制作のテレビ番組『100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪の謎~』や、専門家による一般向け解説書が出された。それらのおかげで証明された後ではあったが、大きな関心を集めることになった。数学者の挑戦の様子を通して、問題がデフォルメされてでも伝えられ、証明のアウトラインや難解さが啓蒙された意義は大きい。


2012年2月21日火曜日

連載・15歳からの数学(予告)


今週末(2月24日)から、桜井進先生の数学連載「15歳からの数学――超入門リーマン予想」が始まります。

悪魔に魂を売ってでも解きたいといわれる魅惑的、かつ最大の難問「リーマン予想」。
私たち一般人には、そもそも問題の意味がわからない。それゆえ、難問らしいことはわかっても、どう難しいのか、なにが魅惑的なのかもわかりません。

まさに前人未踏の頂「リーマン予想」。ただ、もし、その問題が、私たちが中学校以来学んできた同じ「数学」の延長線上にあるのならば、麓あたりまでいけば、その頂ぐらいはおがめるのではないだろうか、と。そんな素朴な問いに桜井先生が応えてくれることになりました、すでに半分ぐらい忘れかけている中学数学の知識を掘り起こしながら、まずは、「リーマン予想」の山頂を目指して、第一歩を踏み出しましょう。

おおよそ隔週のペースでの更新を予定しておりますが、諸事情により、遅れが生じる可能性もありますことをあらかじめお断りしておきます。

「バク論!」武田邦彦氏スペシャルインタビュー

サイエンス・オピニオン誌「バク論!」シリーズ第一弾『人の死なない世は極楽か地獄か』にご登場いただいた武田邦彦氏に、同シリーズのメインテーマである“科学的ディスカッションのあり方”についてご意見を伺いました。
こちらからご覧ください。
武田邦彦氏スペシャルインタビュー
http://gihyo.jp/book/sp/01/bakuron
(スクロールしてください。下のほうにあります)

2012年2月14日火曜日

『DNAを操る分子たち』まもなく発売

知りたい!サイエンスシリーズ、『DNAを操る分子たち――エピジェネティクスという不思議な世界』(武村政春・著)の見本ができてまいりました。発売は2月17日、まもなくです。


DNAの塩基配列がすべてを決定しているかのような(セントラルドグマを中心とした)考え方では語りきれない不思議な世界(エピジェネティクス)を、やさしく詳しく解説しています。
遺伝や生命現象に興味がある方はもちろん、門外漢だからと二の足をふむあなたも、本書を読めば、「我が社のDNAは…」などといった話よりは、もう少し深い話ができるようになるかもしれませんよ。

2012年2月2日木曜日

ポップで振り返る知りサイ100巻の軌跡-016

各地が降雪にみまわれているなか、関東地方には冷たい風が吹き、乾いています。
先日のNHK]「あさイチ」という番組で、ドライアイの特集をしておりましたが、コメンテーターとして、坪田一男先生がご出演されていました(また若返られたような気がしますが、気のせいでしょうか)。

というわけで、今回の書籍は、『涙のチカラ――涙は7マイクロリットルの海』 です。
よく考えてみると、人間の中で目というのは不思議な臓器で、こいつだけがわりとむき出し状態で世間と対峙していたりします(もちろんまぶたはありますが) 。おそらく光を効率よく取り込むためなのでしょう(?)、しかし、そのために乾燥しやすいことは確かで、しょっちゅうまばたきをしては、目の表面に涙を運んでいるわけです。
そんな涙ですが、単に水みたいなものが流れ出ているわけではないんです。目の表面を覆っている涙はおよそ7マイクロリットル、そんなわずかな涙にもいろいろなチカラが秘められているのです。(だからこそ、人は涙ひとつでコロっとだまされてしまうのかも……)
ぜひご一読を!

ちなみに、どうでもいい話ですが、本書籍のカバーを見ていると、アランパーソンズ・プロジェクトの『Eye in the sky』をなんとなく思い出してしまいます。まあほんとにどうでもいい話ですが。