ピタゴラスの定理(三平方の定理)をみなさんは覚えてますか? 直角三角形に関する定理でポップにも書かれているような式で表されるものです。このような数の組み合わせには、すぐ思いつくもので(3,4,5)などがあります。3の2乗(9)+4の2乗(16)=5の2乗(25)です。このような自然数の組はピタゴラス数と呼ばれ、たとえば(5,12,13)などがあります。お時間があればピタゴラス数をいろいろと探してみると面白いかもしれません。
では、これが3乗になったらどうなるでしょうか? 実は解はないそうです(3以上の場合、自然数解がない)。これが、1994年にワイルズによって解決されたフェルマー予想(フェルマーの最終定理)と呼ばれるものです。こちらの証明については余白もないのでまたにしたいと思いますが(笑)、ピタゴラスの定理の証明って、みなさんは考えたことがありますか? 公式をただ覚えただけって方も多いでしょうか?
ピタゴラスの定理の証明方法は、実に何百種類もあるそうです。簡単なものだと相似形を使ったものがあります。アインシュタインが12歳のときに自身で証明したのも、相似を利用したものだったそうです。実際の証明については本書で確認してみてください。
歴史的にみると、ピタゴラスのあとにギリシアでは幾何学が発展することになりますが、その極みがユークリッドの登場、そして『原論』(ユークリッド原論)という形でまとめられた数学書の誕生です。ユークリッド幾何学といわれるのものはこの中に含まれています。特に有名なのが「平行線の公理」と言われるもので、これを端緒として、やがて(といっても数千年を経て)非ユークリッド幾何へと発展していくわけですが、その数学としての発展と、アインシュタインの相対性理論というのがいかに結びついていくか、といったところが本書の醍醐味でもあります。
弊社のウェブ(gihyo.jp)に、
書籍『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』をより面白く、深く読んでいただくための補講(全16回)
が掲載されています。是非ご一読いただければと思います。記事の最後に著者による「本書の意義」が記されていますので、最後にこちらを引用しておきましょう。
(1)特殊相対性理論と非ユークリッド幾何の結びつけ
相対性理論のほとんどというよりすべての本が、特殊相対性理論のあとで一般相対性理論と非ユークリッド幾何とを結びつけています。つまり、重力とは空間の曲がりであるとする理論ですが、そこで初めてリーマンの非ユークリッド幾何が登場します。たしかに、アインシュタインがクラスメートでETHの数学の教授になっていたグロスマンの手ほどきでリーマン幾何を勉強したのは1910年ごろからでしたし、相対性理論をさらに発展させて重力の問題をテーマにするときでした。
実は、本書はアインシュタインも気づいていなかった数学を語ったとも言えます。リーマン幾何は双曲幾何だけなくユークリッド幾何も球面幾何も統合した幾何です。特殊相対性理論の時空は双曲幾何空間の典型的な事例だったのです。数学者によって人工的に作られたと思われた非ユークリッド空間が実は宇宙空間だったという物語です。これをまとまった形で語ったのは本書が世界初だと思います。
(2)これをカットなしに高校生の数学レベルの数学で論じきった。
この類の本の著者や編集者は、多くの読者には難しいだろうから数式やその解説をカットして日常用語で無理に語ろうとするために、かえってわかりづらくなります。しっかり語る本が高校生のために必要です。湯川は、第三高等学校時代に、図書館にドイツから送られてくる物理学雑誌を、鼠が餌をかじるように読んでいたということです。そのうちに量子力学の発展のために自分の出番がなくなってしまうのではないかと不安でならなかったとも書いています。今だってそういう高校生がいるはずです。そういう若人に満足していただける本がなくてはいけないと思います。
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